子どもの嘔吐・
嘔吐が続く原因は?
胃の中のものだけでなく、十二指腸液や胆汁も一緒に出ることがあります。 子どもが嘔吐した場合、その原因のほとんどは胃食道逆流症やウイルスによる胃腸炎です。また、生まれたばかりの赤ちゃんは胃の出口が狭くなったり閉塞(幽門狭窄)したりすることがあり、生後3ヵ月~3歳の子どもは腸が部分的に滑り込む「腸重積症」を起こすことで、嘔吐している可能性があります。また、生まれつき腸が閉じていることで、吐き気や嘔吐が起こることもあります。
赤ちゃんが嘔吐した場合
赤ちゃんは胃の入口の筋肉が大人よりも弱いため、何らかの疾患にかかっていなくても吐きやすいです。少し吐いてもすぐにけろっと元気にしているようでしたら、心配する必要はありません。
しかし、熱が出たり下痢をしたり、吐き気がひどかったり機嫌が悪かったりする場合は、医療機関へ相談しましょう。
幼児が嘔吐した場合
1歳を過ぎると嘔吐する回数は少しずつ減っていきます。しかし、まだ大人よりは吐くことが多いため、咳をきっかけに吐いてしまうこともあります。
赤ちゃんの時と同じように、熱や下痢など他の症状がある時や、吐き気が止まらない時は、医師に診てもらうことが必要です。
子どもが嘔吐したときの
受診の目安
以下のような症状に心当たりがありましたら、当院へご相談ください。
- 吐き続けている
- 吐いたものがコーヒーのカスのような色をしている
- 嘔吐物が緑色・水分を十分に摂れなくて口が乾いている
- 汗が出ない、おしっこが出ない
- 顔色が悪くて元気がない
- 咳や発熱、発疹など他の症状がある
- 息苦しそう・便に血が混ざっている
- 1週間以内に頭を打った
- ひどくお腹を痛がっている
速やかな受診が必要な嘔吐
以下の症状が見られる場合は、迷わずに救急外来へ受診してください。
- 嘔吐と下痢が頻繁に繰り返されている
- おしっこが半日以上出ない
- 唇・舌が乾燥している
- 痙攣があり、意識がもうろうとしている
- 嘔吐物の中に血液や胆汁(緑色のもの)が混じっている
- 頭を打ってから24時間以内に吐いた
子どもが吐いたときに確認してほしいこと
子どもが嘔吐した際は、以下の点に注意しながら様子を伺ってください。
- 吐いた回数(何回、繰り返し吐いているのか)
- 頭痛や腹痛、下痢、発熱などの症状を伴っていないか
- 食欲の有無
嘔吐以外に併発している症状
- 嘔吐+発熱+下痢
- 激しい腹痛+嘔吐
- 咳+嘔吐
- 頭を強打した後の嘔吐
※強打後24時間以内の嘔吐は要注意
子どもの嘔吐を引き起こす
主な原因・病気
子どもが嘔吐をする原因としては、下記の原因や疾患が挙げられます。
ウイルス性腸炎
ノロウイルス
ノロウイルスは感染力が非常に強いウイルスです。子どもだけでなく、大人でも感染する可能性があります
吐いたものなどを処理する際は、使い捨てできるマスクや手袋を使い、ご自身も感染しないように気をつけて処理してください。
ノロウイルスに感染すると、嘔吐をはじめ、下痢や腹痛、発熱などの症状が起こります。
アデノウイルス
嘔吐をはじめ、発熱や下痢、結膜炎などの症状が出る感染症です。肺炎や脳炎を併発して重症化する可能性もあるので、早めに感染対策することが重要です。
ロタウイルス
5歳になるまでに、多くの子どもが感染するウイルスと言われています。嘔吐をはじめ、下痢や発熱などの症状を起こします。ロタウイルスに対する予防接種を受けることで、発症と重症化を防ぐことが大切です。
腸重積
腸管の一部が、後方の腸管へ入り込んで重なってしまう状態です。2歳未満の子どもに多く見られます。
腸重積症になると、激しいお腹の痛みに泣いたり、(発症から少し時間が経つと)ぐずったりします。その後に再度腹痛が起こり、その状態が続きます。
嘔吐や血便を伴うこともあり、速やかに救急外来へ受診する必要のある疾患です。すぐに治療を受けないでいると手術を余儀なくされることもあります。
髄膜炎
ウイルスや細菌などの病原体が、神経系に感染する疾患です。ウイルスが原因の場合は、自然と治ることが多いです。しかし、細菌が原因の場合は、発熱や吐き気、けいれんなどの症状が出ることがあります。
早く治療しないと、後遺症を抱える恐れもある恐ろしい疾患です。髄膜炎を引き起こす病原体には、インフルエンザ菌や肺炎球菌などがあります。これらの病原体に対する予防接種を受けることで、髄膜炎を予防することができます。
食物アレルギー
卵や牛乳、小麦、大豆、果物、魚介類など特定の食べ物に対して身体が過剰に反応するアレルギーです。皮膚が赤くなったりかゆくなったりするだけでなく、吐いたり下痢をしたりすることもあります。また、呼吸が苦しくなったり、便に血が混ざったりすることもあります。
幽門狭窄症
胃から十二指腸へと続く部位である「幽門」が分厚くなることで、食べ物が通過しにくくなり、噴水のような嘔吐を繰り返してしまう状態です。生まれたばかりの赤ちゃんに多く見られます。
嘔吐したとき軽減させる
対処法
吐いている時や直後にすること
お子さまを起こして抱っこして、背中を優しくさすってあげてください。吐き気を悪化させる恐れがあるので、身体は揺らさないように気を付けましょう。
お子さまやご自身の服に吐いたものが付着してしまった場合は、すぐに他の服へ着替えてください。また、お子さまの口の周りに吐いたものが付着したままでいると、さらに吐き気が起こりやすくなります。拭いたり水で洗ったりして、きれいにしてあげましょう。
背中をさすってあげましょう
吐いた後は、お子さまの背中を静かになでてあげましょう。抱っこする時はお子さまの身体を縦にして、身体を揺らさないようにしてください。
ただし、車酔いや風邪による頭痛で吐いた時は、お子さまを横に寝かせて休ませてあげましょう。
こまめな水分補給をさせましょう
お子さまが吐いた後に水を飲ませると、また吐いてしまうことがあります。吐いた後はお子さまの様子を見ながら、少量ずつ常温の経口補水液やイオン飲料などを飲ませてあげてください(授乳中の赤ちゃんの場合は、母乳やミルクを薄めないで、少しずつ飲ませてあげてください) 飲ませてから3時間以上経っても嘔吐がなかった場合は、自由に飲ませても問題ありません。
嘔吐後の食事や飲み物の注意点
嘔吐・吐き気が落ち着いて少し元気な様子を見せていましたら、まずは少量での水分補給を始めましょう。スプーンで一口ずつ、ゆっくりと水や経口補水液、麦茶などを飲ませてください。
水分が十分に摂れるようになりましたら、食事を再開しましょう。おかゆや野菜スープ、具材を細かく切った煮込みうどんなど、消化に良いものを少量ずつ食べさせてください。
牛乳や乳製品、炭酸飲料、柑橘系のジュース、油っこいもの、スナック菓子、食物繊維の多いもの、辛いものなどは、胃に負担をかけるので避けてください。
ご家族間の感染予防・防止
感染症はお子様からご家族へうつることがよくあります。感染を防ぐためには、以下の内容に気を付けましょう。
- 料理する前や食べる前、トイレの後は、手をきれいに洗いましょう。
- 家の中でもマスクを着けましょう。
- 子どもの吐いた物・便を処理する際は、使い捨てのマスクや手袋を必ず着用してください。処理時に使った物を廃棄した後は、手をよく洗いましょう。
- 多くの方が触る場所(ドアのノブや手すりなど)は、次亜塩素酸ナトリウムでこまめに消毒しましょう。
自己判断で吐き気止めを服用させないでください
吐き気止めは自己判断で飲ませないようしましょう。
吐き気止めを使ってしまうと、かえって病原体の排出を邪魔させてしまう可能性があります。